概要
弥生が会計ソフトに経営分析AIを追加したというニュースは、単なる機能追加以上の意味を持つ。これまで『記帳の自動化』が主戦場だった会計クラウド市場が、いよいよ『経営判断の支援』という一段上のレイヤーに踏み込み始めたことを示しているからだ。中小企業の経営者が日々の数字をただ記録するだけでなく、そこから次の一手を導き出せるようにする試みは、会計ソフトを単なる事務ツールから意思決定ツールへと格上げする動きとして注目を集めている。この流れに呼応するように、CRM・SFA領域でも大きな再編の気配が強まっている。
詳細
ブルーテックは『Knowledge Suite+』という新サービスを始動させ、CRMとSFAを統合した国産プラットフォームとしての存在感を打ち出した。これに対抗するかのように、ソフトブレーンは『国産CRM/SFAの再定義』を掲げたイベントを展開し、外資系ツールに依存しない日本型の顧客管理のあり方を訴求している。この二社の動きは、長らく海外製ツールが主導してきた営業支援市場において、国内企業が独自の価値観を打ち出し始めた象徴的な局面と言えるだろう。中堅どころの動きも見逃せない。ハンモックは名刺管理から派生した『ホットプロファイル』に新機能を追加し、営業現場での実用性を高めた。クラウドサーカスは『BowNow』にAIアシスト機能を強化し、マーケティング担当者と営業担当者の双方に訴求する設計に踏み込んでいる。DONUTSは『ジョブカン会計』の制度対応を進め、法改正への迅速な適応力をアピールすることで導入企業の安心感を確保しようとしている。一方、ERP領域ではmultibookがAIチャット機能の予告を行い、今後の機能拡張への期待感を醸成した。新興勢力であるコンシレジは、中小企業向けのRevenue CRMを正式に提供開始し、既存プレーヤーが手薄だったニッチ市場への切り込みを図っている。建設業向けクラウドを展開するサクミルは利用社数の着実な増加を公表し、業種特化型SaaSの強さを示した。そしてジーニーは営業・顧客管理領域の周辺で地道な露出を続け、広告技術で培った基盤を生かした展開を模索している。
まとめ
これらの動きを総合すると、国内の業務ソフト市場は『AIによる高度化』と『国産ならではの細やかな機能対応』という二つの潮流が同時に進んでいることが見えてくる。弥生の経営分析AIが示したように、単純作業の自動化から一歩進んだ知的支援への期待が高まる一方で、ブルーテックやソフトブレーンのように国内企業の商習慣に合わせた柔軟な設計を強みにするプレーヤーも存在感を増している。中小企業のDX推進が本格化する中、どちらのアプローチが市場の主導権を握るのか、今後の機能競争から目が離せない状況が続いている。